2025年12月18日、木曜日の22時。
『Unpretty Rapstar : HIP POP Princess』のファイナルステージが終わってから、少し時間が経ちました。
結果については、すでに多くのメディアで報じられている通りです。
7人のデビューメンバーが決まり、「H//PE Princess(ハイププリンセス)」という名前が世に放たれました。
でも、この数日間。
ふとした瞬間に思い出すのは、派手なパフォーマンスや歓声よりも、あの会場に流れていた「静けさ」ではないでしょうか。
オーディション番組のファイナルといえば、普通はもっと騒がしくて、過剰な演出で、感情を無理やり揺さぶってくるものです。
けれど、ヒポプリの最後は少し違いました。
なぜ、あの「派手じゃない発表の瞬間」が、これほどまでに胸に残るのか。
なぜ、私たちは結果を知ったあとで、静かに泣けてしまったのか。
今回は、数字や順位の話は一度置いておいて。
あの夜、私たちの心に残った「静かな余韻」について、少しだけ語らせてください。
デビュー発表の瞬間にあった「静けさ」
ファイナルステージを見届けて一番驚いたのは、その演出の抑制されたトーンでした。
サバイバルオーディションの「順位発表式」といえば、ドラムロールが鳴り響き、画面が激しく点滅し、司会者が声を張り上げるような展開が「お約束」ですよね。
視聴者の心拍数を上げるために、あらゆる音と光が使われます。
しかし、今回のヒポプリはどうだったでしょうか。
名前が呼ばれるその瞬間、会場には不思議な「間」がありました。
過剰なBGMで煽ることもなく、ただ静かに、これまでの努力が報われる瞬間を待つような空気。
例えば、デビューメンバーの名前が読み上げられる時。
そこには「誰が落ちるか」という残酷な緊張感よりも、「誰の努力がここで結実するのか」を見守るような、祈りに近い静寂があったように感じます。
この「静けさ」こそが、かえって雄弁でした。
大きな音で驚かされるのではなく、静寂の中で名前が響くからこそ、その重みがダイレクトに視聴者の胸に届いたのです。
「派手な演出はいらない。彼女たちの表情だけがあればいい」。
そんな制作側の、あるいは番組全体の「自信」のようなものが透けて見えた瞬間でした。
泣けた理由①:順位ではなく「時間」が見えた
私たちが涙を流した最大の理由は、そこに「順位」ではなく「時間」が見えたからではないでしょうか。
もちろん、1位、2位というランク付けはあります。
しかし、あのステージで名前を呼ばれたメンバーたちを見た時、頭に浮かんだのは「何番だったか」ではなく「どれだけの時間をかけてここに来たか」という背景でした。
その象徴が、最終順位1位でセンターを勝ち取ったナム・ユジュさんです。
『CAP-TEEN』『I-LAND 2』『Stars Awakening』、そして今回のヒポプリ。
彼女にとって、これが「4度目の挑戦」でした。
ナム・ユジュさんの名前が呼ばれた時、多くの人が感じたのは「1位おめでとう」という単純な祝福を超えた感情だったはずです。
過去の番組で流した涙、選ばれなかった悔しさ、それでも諦めなかった数年間の孤独な練習。
そうした「積み重ねてきた時間」が、あの一瞬で報われた。
その事実に、私たちは勝手に自分の人生や、頑張っても報われなかった経験を重ねて、泣いてしまったのではないでしょうか。
1位という数字のすごさよりも、「続けていれば、いつか終わりのないトンネルを抜けられる日が来る」という事実。
それを見せてくれたことへの感謝が、あの涙の正体だった気がします。
泣けた理由②:感情を煽らない演出の強さ
「泣かせよう」とする演出が少なかったことも、逆に涙腺を緩ませる結果になりました。
よくある「脱落者の悲痛な表情」を執拗にアップにしたり、悲しい音楽で感情を誘導したりする演出が、ヒポプリのファイナルでは控えめでした。
例えば、リノさんのご家族、特にお兄さんであるEVNNEのケイタさんが会場で見守っていたシーン。
カメラはそれを「お涙頂戴」の道具として過剰に演出するのではなく、ただそこにある「温かい事実」として切り取っていました。
リノさんが家族の姿を見て安心したように笑った時、私たちは「ああ、よかったね」と素直に共感することができました。
「ここが泣くところですよ」と指示されないからこそ、視聴者は自分のタイミングで、自分の感情を投影できたのです。
スクリーンに流れる「Do my thang」のエンドロールで、練習生たちの過去の映像が流れた時もそうでした。
ただ淡々と、彼女たちが過ごした青春の日々が流れる。
その飾り気のなさが、「番組が終わってしまう」という喪失感と、「彼女たちの未来が始まる」という希望を、静かに、でも深く心に刻み込みました。
視聴者の反応は「歓喜」より「共感」
ファイナル終了後のSNS、特にX(旧Twitter)のタイムラインを見ていて印象的だったのは、その温度感です。
「うおおおお!」という熱狂的な叫びよりも、もっと体温に近い、じんわりとした言葉が多く見られました。
「派手じゃなかったけど、だからこそ泣けた」
「静かに見終わって、今すごく余韻に浸ってる」
「みんな幸せになってほしい」
そんな声が溢れていました。
特に印象的だったのは、デビューできなかったメンバーへの視線です。
ササさんやイ・ジュウンさんがInstagramで発信した感謝の言葉に対して、ファンたちが「謝らないで」「ありがとう」「次を待ってるよ」と、優しくリプライを送る光景。
そこにあったのは、勝者への称賛だけではありません。
同じ夢を追いかけた仲間たちへの、敬意と共感です。
「誰かが勝って誰かが負けた」という殺伐とした結果論ではなく、「みんなで一つの物語を作った」という連帯感が、視聴者の間にも生まれていたように思います。
派手じゃなかったからこそ、ファイナルとして完成していた
『HIP POP Princess』という番組は、最初から最後まで、どこか「職人気質」なオーディションでした。
過剰なドラマ作りよりも、スキルとクリエイティブを重視する。
その姿勢は、ファイナルのあの「静かで温かい終わり方」に集約されていたように思います。
派手な花火や、衝撃的なサプライズ発表はなかったかもしれません。
でも、ナム・ユジュさんが4度目の正直でセンターに立ち、リノさんが家族の前で夢を叶え、ココさんやニコさんが実力でその座を掴み取った。
その「嘘のない結末」だけで、十分すぎるほどドラマチックでした。
「派手じゃないのに、なぜか忘れられない」。
そう思えるのは、私たちが目撃したのが「ショー」ではなく、彼女たちの等身大の「ドキュメンタリー」の結末だったからでしょう。
「H//PE Princess」としてのデビューは、2026年。
少し先の話になりますが、この余韻を噛み締めながら待つのも、悪くない時間です。
あの静かな夜に流した涙を、きっと私たちは、デビュー曲を聴くたびに思い出すのだと思います。
派手じゃない終わり方だったけど、それでよかった
正直なところ、SNSの一部では「もっと派手な演出が見たかった」「あっさりしていた」という声も見かけました。 でも、私たちは知っています。
派手な演出で飾らなくても、彼女たちの汗と涙だけで、ステージは十分に輝いていたことを。
「Unpretty Rapstar : HIP POP Princess」という番組は、最後まで、参加者たちの「実力」と「人間性」を信じ抜いた番組でした。
過剰なスパイスで味付けするのではなく、素材そのものの良さを噛み締めるような、そんな数ヶ月間。
2026年のデビューまで、少し時間は空きます。
でも、この「静かで温かい余韻」を胸に抱えていれば、その待機時間さえも、きっと愛おしいものになるはずです。
「派手じゃなかったけど、最高だったね」 もしあなたの周りにそう呟く人がいたら、ぜひ「そうだね」と頷いてあげてください。
それが、私たちがこの番組から受け取った、一番のギフトなのですから。



参考リンク・出典
- 番組公式・配信情報
- ニュース・レポート


