『Unpretty Rapstar : HIP POP Princess』ファイナルの興奮が、まだ肌に残っているという方も多いのではないでしょうか。
結果発表のドラマ、デビューメンバー決定の瞬間、もちろんすべてが感動的でした。
しかし、一夜明けてもなお、脳裏に焼き付いて離れない光景が一つあります。
それが、ファイナルミッション Track 1として披露された「SPEAK UP」のステージです。
SNS上でも「こればかりリピートしてしまう」「なぜか涙が止まらなかった」という声が絶えない、あの数分間。
なぜ、あのパフォーマンスはあれほどまでに私たちの感情を揺さぶったのか?
今回は順位や結果といった数字を一旦脇に置き、ファイナルのハイライトとなった「SPEAK UP」という奇跡のステージについて、その熱狂の正体を考察します。
ファイナルで最も空気を変えた「SPEAK UP」
12月18日の生配信。
オープニングの全員歌唱が終わり、緊張感が漂う中で始まったファイナルミッション。
そのトップバッターとして「SPEAK UP」のイントロが鳴り響いた瞬間、会場の、そして画面越しの空気が一変したのを感じましたか?
それは単に「かっこいい曲が始まった」という高揚感ではありませんでした。
何か、もっとヒリヒリするような、切実なエネルギーの塊がステージから押し寄せてくる感覚。
視聴者からも、
「鳥肌が立った。アイドルオーディションのレベルを超えている」
「始まった瞬間、画面から目が離せなくなった」
「彼女たちの『叫び』が聞こえた気がした」
といった声がSNSに溢れました。
この楽曲がファイナルの1曲目に置かれたことにも、大きな意味を感じずにはいられません。
タイトル通り「声を上げる(SPEAK UP)」ことをテーマにしたこの曲は、これまで過酷なミッションの中でプレッシャーに耐え、評価にさらされ続けてきた彼女たちが、初めて「自分自身の感情」を爆発させるための起爆剤でした。
綺麗な衣装を着て笑うだけのステージではない。
彼女たちの瞳には、獲物を狙うような鋭さと、今にも壊れそうな繊細さが共存していました。
その「本気」の圧が、観る者の心臓を直接掴んだのです。
パフォーマンス構成とメンバー配置が生んだ説得力
「SPEAK UP」が伝説的なステージとなった要因は、そのメンバー構成とパフォーマンスの構築美にもあります。
NIKO(ニコ)、RINO(リノ)、KIM SUJIN(キム・スジン)、SASA(ササ)、CHOI YOUMIN(チェ・ユミン)、MIRIKA(ミリカ)。
この6人の配置は、まさに「必然」と言えるバランスでした。
まず特筆すべきは、ラップとボーカルのコントラストです。
ニコさんが放つ鋭利な刃物のようなラップが空間を切り裂き、そこにユミンさんやミリカさん、ササさんの個性的で重厚なフロウが重なる。
張り詰めた緊張感が極限まで達したところで、キム・スジンさんの透き通るような、それでいて芯のあるボーカルが光を差す──。
この「緊張と緩和」の波状攻撃が、聴く者の感情を揺さぶり続けました。
そして、リノさんがセンターに立った時の、物語を背負ったような求心力。
誰か一人が目立って「私が主役だ」と主張するのではなく、6人全員が「この曲を届ける」という一点で完全にシンクロしていました。
視線の配り方、手先の角度、そして互いに背中を預けるようなフォーメーション。
それらすべてが、技術的な上手さを超えて、「チームとしての覚悟」という説得力を生み出していました。
「誰がデビューするか」という競争の場でありながら、あの瞬間だけは6人が一つの生命体のように見えた。
その没入感こそが、このステージの真骨頂だったと言えるでしょう。
ファイナルという文脈が感情を増幅させた理由
もし、このパフォーマンスが予選や中間発表で行われていたとしたら、ここまで「泣ける」ステージにはならなかったかもしれません。
「SPEAK UP」がこれほどまでに刺さった最大の理由は、やはり「ファイナルという文脈」です。
約3ヶ月にわたるサバイバル。
言葉の壁、実力の壁、そして常に付きまとう脱落の恐怖。
それらすべてを乗り越えて辿り着いた最後のステージで、彼女たちは歌詞に自らの想いを乗せました。
「誰になんと言われようと、私は私の道を行く」「私の声を聞いて」
そのメッセージは、作られた演出ではなく、彼女たちのリアルな叫びそのものでした。
特に、デビューが確約されていないメンバーも含めた混成チームであったことが、切実さをより増幅させました。
「これが最後になるかもしれない」
そんな刹那的な輝きが、パフォーマンスの端々に滲み出ていました。
視聴者は、画面に映る彼女たちの姿に、これまでの努力や苦悩の日々を重ね合わせ、理屈抜きで心を動かされたのです。
ただ上手いだけのパフォーマンスではなく、「人生を賭けた瞬間の輝き」を目撃した。
だからこそ、多くの人が涙を流さずにはいられなかったのではないでしょうか。
「落ち着いて見返したくなる」ステージになった理由
ファイナル終了から数日が経った今も、XやYouTubeで「SPEAK UP」の動画が拡散され続けています。
生配信の時は、ただただ圧倒されて感情が追いつかなかった人たちが、「落ち着いてもう一度見たい」と戻ってきているのです。
冷静に見返すと、また新しい発見があります。
激しいダンスの合間に見せる、ふとした瞬間の表情。
メンバー同士がアイコンタクトをとる一瞬の信頼関係。
歌詞の一言一句に込められたニュアンス。
見るたびに味わいが増し、「消費」されて終わるバズ動画ではなく、記憶に深く刻まれる「作品」へと昇華されています。
「H//PE Princess(ハイププリンセス)」としてデビューを掴んだメンバーにとっても、惜しくも別の道を歩むことになったメンバーにとっても、この「SPEAK UP」は間違いなくキャリアのハイライトの一つとなるでしょう。
番組は終わりましたが、この動画が残る限り、彼女たちがこの夜に放った熱量が消えることはありません。
伝説は、順位がついた瞬間に生まれるのではありません。
人の心を震わせ、言葉にできない感情を共有させた瞬間──まさに「SPEAK UP」のようなステージにこそ、伝説は宿るのだと教えられた気がします。


参考サイト・出典一覧
- 番組公式サイト・動画
- 公式情報
- 関連ニュース


